コーナーロスの取扱説明書

コーナーロスの基礎知識

コーナーロスとは

コーナーロスとは、レースのコーナー部分で外を回すことによる距離ロスのことです。日本の競馬は、直線のみで構成される新潟芝1000mを除いて、すべてのコースにコーナーが存在します。

そして、各コーナーで内を回った馬と外を回った馬では走る距離が著しく異なります。例えば、人間が陸上競技で使う400mトラックの場合、走る距離が同じになるようにセパレートスタート(外のコースほどスタート位置が前になる)が採用されています。

しかし、競馬の場合は全世界共通で、横一線のスタートが採用されているのです。そのため、ハナ差で勝敗を分けることも多い競馬において、外を回った馬は非常に大きなロスがあります。

POINTコーナーで外を回した馬は不利

コーナーロスはどれぐらい不利なのか

コーナーで外を回した馬はロスがあるということに関して、異論を唱える人はほとんどいないのではないでしょうか。

陸上競技のトラックでスタート位置が異なるように、外を回した方が走る距離は長くなる=距離ロスがあるということは既に証明されている事柄です。根拠に関してダラダラと説明する必要はないでしょう。

一応、ざっくりとした計算式を提示させていただくと、1頭分の外を回る場合の距離ロスは「外側の円周-内側の円周」で計算することが可能です。外を走る馬が内を走る馬の1m外を走ると仮定した場合、下記のような計算式で概算値を出すことができます。

(コーナー半径+1m)×円周率×2-(コーナー半径)×円周率×2

結論から申し上げますと、1周コースの場合、1頭分外を各コーナーで回していると、内の馬よりも約6m長く走ることになります。

着差に換算すると「2.5馬身ほどの不利」です。

例えば、これが1頭分ではなく、2頭分・3頭分・・・・となっていけばかなり大きなロスになることをご理解いただけると思います。

ハナ差・アタマ差で決着することが多い競馬においてはかなりの不利を被っていると言えるでしょう。

POINTコーナーで外を回し続けると2.5馬身ほどの不利がある

各馬のコーナーロスを確認する方法

各馬がコーナーでどれだけ外を回したかを確認するには、「レースVTR」を見るというのが最も一般的かつ王道の手法だと思います。レースVTRは、JRA公式サイトのレース結果ページよりレース映像およびパトロールビデオが閲覧できます。

但し、全レースのVTRを確認するのは時間が掛かりますし、何よりも面倒だと感じる方が多いでしょう。

そこで使えるのが「コーナー通過順位」です。実は、レースVTRを見ないでも、各馬のコーナー通過順位を確認することで、コーナーロスがある馬(=コーナーで外を回した馬)を把握することが可能です。

POINTコーナー通過順位でコーナーで外を回した馬がわかる

コーナーの基礎知識

コーナー通過順位を活用して、コーナーで外を回した馬を見抜く方法を紹介する前に、まずはコーナーの名称に関して説明していきます。

日本の競馬ではコーナー毎に1コーナー~4コーナーという名称が割り振られています。

ゴール板を基点に1周するコースの場合、最初に迎えるカーブを「1コーナー」と呼び、続くカーブを「2コーナー」、そしてゴール手前の最終コーナーを「3コーナー」「4コーナー」と呼びます。

但し、半周しかしないコース(ワンターンコース)の場合でも、ゴール手前の最終コーナーを「3コーナー」「4コーナー」と呼びます。つまり、通過する順に「1コーナー」「2コーナー」と呼ぶのではなく、それぞれのコーナーの呼び名は固定されたものです。

東京の芝コースを例に説明していきます。

1600mのレースの場合はワンターンのコースで1~2コーナーは通過せずに、3・4コーナーのみを通過します。2400mの場合は1周するため、1~4コーナーを通過します。そして、2000mの場合は特殊な位置からスタートしており、スタート後すぐに2コーナーを通過し、3~4コーナーを通過します。

各コーナーの呼び名は上記のように固定されたものになってるのです。

POINT1~4コーナーの呼び名は固定されたもの

コーナーロスの見抜き方

コーナー通過順位を確認する

コーナー通過順位を確認することで、各コーナーで外を回した馬(=コーナーロスがあった馬)を見抜くことが可能です。

コーナー通過順位はJRA公式サイトのレース結果ページに掲載されています。

2022年7月23日札幌11R:しらかばステークスを例に説明していきます。コーナー通過順位は下記のようになっていました。

コーナー通過順位はコーナー毎の各馬の順位を示すものです。逃げている馬から順番に、左から馬番が記載されています。

また、()内は1馬身未満の差で併走している馬群を示し、「,」は前にいる馬との差が1馬身以上2馬身未満、「-」は差が2馬身以上5馬身未満、「=」は差が5馬身以上というように記号を見れば、コーナー毎の馬群の状況がある程度わかるようになっています。

さらに、併走している馬群=()内はコーナーで内側の馬から順に記されています。

つまり、()内で右側に表記されている馬は馬群の外を走っている=コーナーで外を回した馬だということがわかります。

特に3コーナーでは5頭が併走する大きな馬群(3,4,5,12,13)ができていました。この場合、3番が内から1頭目を回り、4番が内から2頭目、5番が内から3頭目、12番が内から4頭目、13番が内から5頭目を走っていることがわかります。

POINTコーナー通過順の()内を見ることで外を回した馬がわかる

勝ち馬の9割が3コーナー内から2頭目以内

コーナーで外を回した馬と内を回した馬でレース結果にどれほどの影響を与えるのか。

コーナー通過順位を活用してコーナーロスを確認する手法を用いて、3コーナーの位置別1着率を計算した場合、下記のような結果になりました。

実に勝ち馬の9割以上が3コーナーで内から2頭目以内の進路を通っており、コーナーロスという競馬ファクターがレース結果に与える影響の大きさを物語っています。

逆に、コーナーで外を回して好走した馬は「強い」と考えることができますし、負けた馬でもコーナーで大きく外を回した場合は「ノーカウントの1戦」と考えて次走以降の巻き返しを期待して良いでしょう。

POINT・コーナーで外を回して好走した馬は強い
・コーナーで外を回して負けた馬は巻き返せる

実践例:2022年7月23日札幌11R

2022年7月23日札幌11R:しらかばステークスを例に説明していきます。

3コーナーで馬群になっているのは(1,6,14)・(3,4,5,12,13)・(2,10)の三カ所で、4コーナーで馬群になっているのは(1,6)・(3,4,11)・(5,13)・(2,12,10)の四ヵ所です。

3~4コーナーのコーナーロスをまとめると下記のようになります。

ざっとご覧いただければ、コーナーで内を回した馬が上位に入線し、コーナーで外を回した馬が下位着順に敗れていることがわかります。

3コーナーで内から5頭目の大外を走った13番ショウナンアリアナは11着に敗れましたが、次走は13番人気ながらも3着に好走しました。

このようにコーナーロスを確認することで隠れた穴馬を見つけることができます。

POINTコーナーで外を回して負けた馬は次走以降に穴をあける

補足

コーナー通過順位は完璧ではない

コーナー通過順からコーナーロスを見抜く方法は大変有効的ですが、決してコーナーロスがあった馬を100%の確率で見抜けるものではありません。

コーナー通過順は他馬と併走している場合に()内で括ってくれますが、併走していなければ()内で括られません。つまり、下記のように単走で外を回している馬(17番)がいる場合はレースVTRを確認しなければわからないのです。

上記の場合のコーナー通過順位は「(4,14,13)15,17」というように表記されます。したがって、レースVTRを確認した方が、より正確にコーナーロスを把握できるのは間違いないのですが、デメリットもあります。

例えば、上記例の17番の場合、まともな騎手が騎乗していればコーナーをロスなく回りたいはずで、下記のような進路を選択するはずです。

それにも関わらず、外を回しているということは、揉まれ弱かったり、寄れる癖があったり、ストライドが大きく外をゆったりと回したかったりとそれなりの理由がある可能性が高いです。

外を回さなければならない理由がある馬は、次走でも同様にコーナーロスがある進路を選択する可能性が高いので狙うべきではありません。そういった理由もなくただ外を回しているだけであれば、それは騎手のコーナリング技術不足なので乗り替わりを待つ必要があります。

レースVTRを見て細かい事例を判別するには一定以上のテクニックが必要で、不要な馬までも選出してしまう可能性があります。

レースVTRを見なくても、コーナー通過順位だけで、十分にコーナーロスがある馬は把握できるので、まずは通過順位を活用することに集中していただければと思います。

POINTコーナー通過順位からコーナーロスを見抜くだけで穴馬の発掘は充分に可能

外を回すロスが相殺されるケース

コーナーで外を回すことによる距離ロスというのは絶対的なものですが、レース単位では相対的に外を回した方が有利になるケースもあります。例えば、下記のようなものが挙げられます。

  1. 内の馬場が荒れているレース
  2. 気性的な問題などで内が苦手な馬

芝のレースで内の馬場がボコボコに荒れている場合や、包まれると走る気をなくす馬やダートのレースで砂を被るのが苦手な馬が内を回した場合は、外を回すよりも不利になるケースがあります。

他にも、レース中の風、レースのペース・ラップ推移などで外を回す不利が軽減されることがありますが、外を回す馬が恵まれたというわけではなく、内を回した馬も外も回した馬もロスがあったというのが正解です。

いずれの馬も”走破タイムに損失があった”という点は変わりません。

内側を通った馬が恵まれたレースで外側を通った馬の方が次走の成績が良くなるのは事実ですが、外を回したから有利だったということはなく、いずれにしても走破タイムの損失があったという考えを持っておいた方が良いです。

また、前述したデータでも示した通り、勝ち馬の9割以上が3コーナーで内から2頭目以内の進路を通っており、大多数のケースで内を回した馬が恵まれて、外を回した馬が不利を被ります。

POINTレース単位では外を回すロスが軽減されることもある

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川田信一

川田信一競馬予想家

オンラインサロン『Kawada Salon』主宰。年間5億ほど馬券を購入する馬券生活者。日本一精度の高い競馬予想を目指します。X(twitter)にて不定期で無料予想も公開していきます。

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