※本サイトで掲載しているデータは2015年1月~2022年11月
レース間隔(ローテーション)の基礎知識
レース間隔(ローテーション)とは
スポーツ選手が本番の試合に向けて体調を整えていくように、競走馬もレースに向けて調整をしていきます。
状態をピークに持っていくために、牧場での過ごし方、入厩してから厩舎でどのような調教を積んでいくかなどを決定していきますが、「レース間隔(ローテーション)」も重要なファクターの1つです。
実際に、レース間隔と好走率は密接に関係しています。参考までにレース間隔別の馬券圏内率(複勝率)および回収値をご覧ください。
前走とのレース間隔が3~4週の馬の成績がピークで、それよりも短くても長くても成績が下降傾向にあります。
レース間隔によって複勝率で1.5倍ほどの差があることからも、レース間隔が重要なファクターの1つであることをご理解いただけると思います。
POINTレース間隔は競走馬の好走率を左右するファクターである
レース間隔の呼び名
具体的な攻略法を紹介する前に、レース間隔の呼び名について補足しておきます。
本記事では、前走とのレース間隔を1週・2週・3週・・・というように週単位でしていきますが、媒体によっては1週のことを「連闘」と表記したり、2週のことを「中1週」と表記することもあるのでご注意ください。
レース間隔の基本攻略法
レース間隔を着順とセットで考える
前述したデータに基づけば、前走とのレース間隔が3~4週の馬が最も好成績になっていますが、あくまでも全体を通した場合の成績であり、ベストなレース間隔は馬によって異なります。
とはいえ、馬1頭1頭を個別に判断していくのは労力を要しますし、仮に判断するとしても明確な基準を持つことが大切です。
そこで、おすすめしたいのが、レース間隔を「前走着順」とセットで考えることです。
前走1~5着、6~9着、10着~の3つに分類した上で、レース間隔別成績を見ていきましょう。
前走1~5着馬のレース間隔別成績
馬券圏内率のピークはレース間隔3~4週であり、全体成績と大きく変わりませんが、1~2週でも成績がそれほど落ちません。むしろ、回収率面で見るとレース間隔1週(=連闘)が最も高くなりました。
前走で好走できているということは体脂肪などフィジカルの状態が良い可能性が高く、後は状態を維持するだけで良いわけです。
適度な運動をしつつ短い間隔で出走すれば再度の好走が期待できます。
逆に、レース間隔を長く空けてしまうと、体脂肪が増えたり、戦闘モードではなくなってしまう可能性があります。
POINT好走馬はレース間隔を詰めた方が良い
前走6~9着馬のレース間隔別成績
続いて、前走6~9着馬のレース間隔別成績を見てみましょう。
前走1~5着馬の場合と比較すると、馬券圏内率のピークは5~25週と大きくズレる形となりました。
前走で掲示板にも入れなかった馬は、心身ともにピークとは遠い状態なので、しっかりと間隔を空けて調整をしなければならないということです。
敗北した原因がフィジカル面だけであれば5~9週程度の間隔で体脂肪も絞れて来ると思いますが、悪い癖などメンタル面に由来するものであれば一定期間置いた方が良いと言えるでしょう。
POINT前走掲示板に入れなかった馬は一定期間をあけた方が良い
前走10着~馬のレース間隔別成績
最後に、前走10着以降の馬のレース間隔別成績を見ていきます。
前走6~9着馬と比べて、馬券圏内率のピークがさらに下がる結果となりました。
通常、そこそこの実力がある馬であれば、多少状態が悪くてもそれなりの着順には走れます。大敗するということは大きく足りないものがあり、好走するには何らかの大きな変化が必要です。
大敗する原因は馬によって異なりますが、とにかく時間を掛けて調整をした方が良いとうことです。
一般的に長期休養明けというとイメージが悪いかも知れませんが、前走10着以下に敗れた馬に限っていえば、むしろ休養したほうが良いというデータになっています。
POINT大敗馬は長期間間隔をあけて調整し直した方が良い
なぜ、ベストのタイミングで出走しないのか
ここまで述べたことをまとめると、調子が良い=好走している馬はそのまま使い続けて、調子が悪い=大敗する馬は一旦レース間隔をあけて再調整をすべきということです。
ただし、そのようなことは馬を育成するプロである調教師であれば充分に理解していることでしょう。
では、なぜ、ベストのタイミングで出走しないのか。
様々な理由がありますが、代表的な例を挙げるとすれば、必ずしも狙ったレースに出走できるとは限らないということです。
例えば、3勝クラスのダート戦などは年間で組まれているレース数が非常に少なく、毎週除外馬が大量に発生します。
その他にも、(馬のプロではない)馬主側のオーダーで出走せざるを得なかったりで、調子が良いのに出走しなかったり、調子が悪いのに出走したりとベストのタイミングで出走できるとは限らないのです。
逆に、狙ったレースに狙った騎手で狙った状態で出走できることの方が難しいと考えてください。
それゆえにレース間隔を見ることは大切なのです。
補足:レース中の不利による大敗馬は例外
レース間隔を着順とセットで考える手法を用いる際に、レース中の不利や騎手の明らかな騎乗ミスなどで大敗した馬は例外としてください。
小さな不利程度であれば騎手も最後まで追い続けますが、大きな不利を受けると追うのをやめて競馬に参加しないこともあります。これもデータ上では「大敗」となりますが、大敗扱いする必要はありません。
むしろ、レース中の不利を受けて大敗した馬が、短いレース間隔で出走してくるということは、陣営サイドが状態も良く不利がなければ勝ち負けできたと判断している可能性が高く狙い目です。
実際に、著書「コーナーロス革命」で紹介している算出方法で、3コーナーロス大と分類される馬は、レース間隔を詰めて使った場合に非常に優秀な成績を収めています。
※コーナーロスについて学びたい方は、コーナーロスの取扱説明書を参考にしてください。
コーナーロスの取扱説明書
コーナーロスの基礎知識 コーナーロスとは コーナーロスとは、レースのコーナー部分で外を回すことによる距離ロスのことです。日本の競馬は、直線のみで構成される新潟芝1000mを除いて、すべてのコースにコーナーが存在します。 そして、各コーナーで内を回った馬と外を回った馬では走る距離が著しく...
レース間隔の注意事項
休み明け2戦目の馬に注意
「休み明け2戦目で狙い目」
というような記事をよく見かけますが、上記データで示した通り、休み明け2戦目だからといって成績が大きく向上することはありません。
それにも関わらず、人気する傾向があるので、回収率は若干低くなっています。
大敗馬がレース間隔を空けなければ好走率が上がらないように、状態をよくするには一定以上の期間、トレーニングを積む必要があります。
レースを一度使った程度では、多くの人が考えているほど状態は向上しないのです。
ただし、気性的な問題で休み明け2戦目でパフォーマンスを大きく向上させる馬や、休み明けは調教を軽めにしか行わず2戦目で勝負に出る厩舎があるのも事実です。
そういったケースは個別に判断していくしかありませんが、大きな視点で見ると成績が大きく向上するわけではなく、期待値も低いので過剰に評価するのは控えた方が良いでしょう。
POINT休み明け2戦目の馬は低期待値
使い詰めの馬に注意
「使い詰めだが状態は維持できている」
というような調教師のコメントを見かけることがあります。上記データで示した通り、3戦連続1~2週のレース間隔で出走しても複勝率はそれほど落ちてはいません。
しかし、回収率でみると大きく低下していることがわかります。これは、人気を裏切っている馬が多いということです。
好走した馬はレース間隔を詰めた方が良いという大原則は変わりませんが、だからといって短い間隔で使い続けることは得策ではありません。
2着→3着→2着と好走して人気を集めている馬が大敗するケースで、レース間隔を見ると使い詰めだったということがよくあるので注意してください。
POINT使い詰めの馬は低期待値
まとめ
「●●記念はレース間隔7~8週の馬が狙い目」
というような記事をよく見かけます。実際に、該当する期間においては、そのレース間隔の成績が良いのでしょう。しかし、その成績が今後も再現するかどうかは別の話しです。
今回お話ししたように、適切なレース間隔というものは、馬の状態によって変動します。
着順がすべてではありませんが、一つの目安としては非常に有効的なので、レース間隔をチェックする際に参考にしていただければ幸いです。